テキーラとメスカルの熟成区分
ブランコ、レポサド、アネホ同じ言葉でも、規格は別々に定められています
テキーラもメスカルも、樽で寝かせた長さによって呼び名が変わります。 ブランコ、レポサド、アネホ。同じ言葉を使いますが、規格はそれぞれ別に定められています。 熟成の長さは品質の順位ではありません。区分の意味が分かると、ラベルの読み方と選び方が変わります。
テキーラの熟成区分
テキーラは公式規格(NOM-006)で、熟成の有無や期間、仕上げ方によって5つに分類されています。熟成が浅いものほどアガベ本来の風味が、長いものほど樽由来の香りとコクが際立ちます。
| ブランコ | 樽熟成なし。2ヶ月未満なら寝かせてもブランコを名乗れます |
|---|---|
| ホーベン | ブランコに熟成させたテキーラを混ぜたもの、または着色したもの |
| レポサド | オーク樽で2ヶ月以上 |
| アネホ | 600リットル以下のオーク樽で1年以上 |
| エクストラ・アネホ | 600リットル以下のオーク樽で3年以上 |
※規格が定めるのは期間の下限だけです。「レポサドは1年未満」のような上限はありません。
同じ銘柄のブランコ、レポサド、アネホ。樽で過ごした時間が長いほど色が付きます。
SOLD OUT
ブランコ。樽で寝かせないので無色です。
SOLD OUT
アネホ。1年以上の樽熟成で琥珀色になります。
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Blanco(ブランコ)
シルバー、プラタとも呼ばれます。蒸留後に樽熟成を行わないタイプです。規格では、オークまたは樫の容器で2ヶ月未満であれば熟成させてもブランコを名乗れます。アガベの香りと味わい、そしてアガベを蒸したときの香味がもっとも素直に残っており、これぞ「地テキーラ」という個性を楽しめます。造り手の技量がそのまま表れるタイプでもあります。
※ブランコに樽熟成させたテキーラを混ぜたもの、またはブランコをカラメルなどで着色したものは「ホーベン」(オロ、ゴールド)という区分になります。店頭で「ゴールド」と呼ばれるものの多くがこれにあたります。着色や加糖に使えるものは規格で4つに限られ、カラメル色素、オークの抽出物、グリセリン、砂糖のシロップだけです。メスカルの「ホーベン」とは意味が違います(メスカルの熟成区分)。
Reposado(レポサド)
スペイン語で「休ませた」という意味で、2ヶ月以上のあいだ樽で寝かせたものです。樽材はオークと定められていますが大きさに規定はなく、大樽でおだやかに寝かせる造り手もあれば、小樽でしっかり樽の個性をまとわせる造り手もあります。アガベの風味を残しながら角がとれ、まろやかな味わいになります。
Añejo(アネホ)
スペイン語で「熟成させた」という意味で、600リットル以下のオーク樽で1年以上寝かせたものです。樽が小さいぶんお酒と木が触れる面積が大きく、バニラやカラメルを思わせる甘い香りが加わります。色は琥珀色を帯び、コクのある味わいに変わります。
Extra Añejo(エクストラ・アネホ)
600リットル以下のオーク樽で3年以上熟成させた、もっとも長期の区分です。色は濃く、ウイスキーやブランデーに通じる複雑な香りを持ちます。生産量が限られるため高価格帯の製品が中心です。造り手が家族や祝いごとのために取り置くのも、こうした長期熟成のものです。
メスカルの熟成区分
メスカルの規格(NOM-070)にも熟成の区分があります。テキーラと同じ言葉を使いますが、期間の境界も容器の規定も別に定められています。
メスカルでは、樽で寝かせないものが本流です。
アガベと土窯の香りをそのまま味わうお酒なので、樽の香りで覆わない造りが基本になります。熟成区分は、テキーラほど大きな意味を持ちません。店頭で見かけるメスカルの多くがホーベンなのは、そのためです。
それでも区分があるのは、規格が呼び名を定めているからです。メスカルの規格はテキーラと同じ枠組みで、ホーベン、レポサド、アネホの区分を早い時期から持っていました。樽で寝かせた製品は、テキーラやウイスキーに慣れた飲み手に向けて造られることが多く、本流ではないものの、同じ原酒の違う表情として楽しまれています。
4つの区分
| ブランコ/ホーベンBlanco / Joven | 無色透明で、蒸留のあとに何の工程も加えていないもの |
|---|---|
| マドゥラード・エン・ビドリオMadurado en vidrio | ガラス容器で12ヶ月を超えて寝かせたもの。木の香りを付けずに角を落とす、メスカルだけの区分です。流通はごくわずかです |
| レポサドReposado | 木の容器で2ヶ月から12ヶ月。容器の大きさに規定はありません |
| アネホAñejo | 1,000リットル未満の木の容器で、12ヶ月を超えて寝かせたもの |
※このほかに、グサノや果実などを加えた「アボカド・コン」、鶏の胸肉などとともに蒸留した「ディスティラード・コン」という区分があります。熟成ではなく、材料による区分です。
蒸留したまま瓶詰めすればホーベン。メスカルの基本の姿です。
樽で寝かせればレポサド、アネホ。シナイの地下の貯蔵庫で、番号を振った樽で管理します。
同じ「ホーベン」でも意味が違う
テキーラのホーベンは、ブランコに熟成させたテキーラを混ぜたもの、または着色したものでした。メスカルのホーベンは、蒸留したあとに何もしていないものです。同じ言葉で、中身はほとんど反対です。
もうひとつ違いがあります。メスカルでは、区分の違うものを混ぜることが認められていません。混ぜてよいのは、同じカテゴリーで同じ区分のメスカルどうしだけです。テキーラのホーベンのような「ブランコとアネホのブレンド」は、メスカルでは作れません。
着色や加糖の扱いも違います。テキーラではホーベンの中に含まれますが、メスカルでは「アボカド・コン」という別の区分になり、加えるのも虫や果実、蜂蜜といった風味の材料です。
テキーラとの対応
同じ言葉でも、境界と容器の規定が違います。寝かせた期間で並べると、違いが見えます。
※目盛りは等間隔ではありません。テキーラは期間の下限だけが決まっていて、矢印は「それ以上寝かせてもよい」ことを表します。2年寝かせたものはレポサドでもアネホでも名乗れますが、アネホを名乗るには600リットル以下の樽で寝かせる必要があります。メスカルのホーベンは熟成させないもので、テキーラのブランコのように「2ヶ月未満なら寝かせてもよい」という幅はありません。メスカルのレポサドは12ヶ月までで、それを超えるとアネホになります。
当店で扱うメスカルで言えば、「シナイ ホーベン ブランコ」はホーベン、「シナイ レポサード」はレポサド、「シナイ レゼルヴァ・エスペシアル」はラベルに「AÑEJO 8 AÑOS」とあるとおり、8年寝かせたアネホです。テキーラなら3年を超えればエクストラ・アネホを名乗れる年数ですが、メスカルの規格ではアネホが最上位で、それ以上の区分はありません。
※メスカルには、熟成とは別に、造り方による3つのカテゴリー(メスカル、アルテサナル、アンセストラル)があります。造り方による3つのカテゴリーで説明しています。
ラベルの読み方
ラベルで見る4つの項目
ボトルを手に取ったら、見る順番を決めておくと迷いません。テキーラなら次の4つです。
| 銘柄名 | いちばん大きく書かれているとは限りません。造り手の名前やブランド名を探します |
|---|---|
| 熟成区分 | ブランコ(Blanco)、レポサド(Reposado)、アネホ(Añejo)、エクストラ・アネホ(Extra Añejo)のどれか |
| 100%アガベの表示 | 「100% de Agave」または「100% Agave」。なければ、アガベ以外の糖類を使った製品です。原料による分類 |
| NOM番号 | 「NOM」に続く4桁の数字。蒸留した施設の登録番号で、同じ番号なら同じ蒸留所です。テキーラができるまでの豆知識で説明しています |
メスカルでは、熟成区分のほかに、造り方のカテゴリー(Mezcal、Mezcal Artesanal、Mezcal Ancestral)と、使われたアガベの品種が書かれます。たとえばシナイのアネホのラベルには「MEZCAL ARTESANAL」「AÑEJO 8 AÑOS」「100% AGAVE ANGUSTIFOLIA」と並んでいて、カテゴリー、区分、品種の3つがこの順に読み取れます。
「アネホ」は銘柄名ではありません
ラベルには銘柄名と熟成区分が並んでいますが、区分のほうが大きく書かれていることがあります。そのため、お店で見かけた一本を「アネホ」という名前のお酒だと思ってしまうことがあります。
※ラベルの例(AI生成のイメージ)。いちばん大きな「AÑEJO」は熟成区分で、銘柄名は上の小さな部分です。
アネホもレポサドも、造り方を示す言葉です。どの造り手も同じ語を使うので、同じ「アネホ」でも銘柄が違えば中身はまったく別のものになります。
気に入った一本をまた飲みたいときは、区分ではなく銘柄名を控えておくと確実です。
市販の銘柄はどこにあたるか
店頭やオンラインで見かける銘柄も、すべてこの区分のどれかに入ります。「ホセ・クエルボ」「サウザ」「1800」「パトロン」「ドン・フリオ」といった名前を目にしたとき、その横に書かれた Blanco、Reposado、Añejo という語が、樽で寝かせた期間を示しています。
熟成の長さは品質の順位ではありません。アガベの風味を楽しむならブランコ、樽の香りを求めるならアネホ、という選び方になります。
同じ銘柄のレポサドとアネホ
「同じ銘柄のレポサドとアネホは何が違うのか」という疑問は、ここまでの説明で解けます。主な違いは、どれだけ長く樽で寝かせたかです。長いほど色が濃く、樽由来の甘い香りが増し、価格も上がる傾向があります。ただし同じ銘柄でも、製品によって原酒やブレンド、仕上げ方が異なる場合があります。
実際に比べるなら、同じ銘柄で区分だけが違う2本を並べるのがいちばん分かりやすい方法です。当店で扱うテキーラでは「テキーラ・グリジョス」のレポサドとアネホ、メスカルでは「シナイ」のホーベン、レポサド、アネホがそろっています。同じ蒸留所の同じ造りで、樽で過ごした時間だけが違います。
クリスタリーノ
近年、「Añejo Cristalino」のように書かれたテキーラを見かけるようになりました。アネホやエクストラ・アネホを活性炭などでろ過し、色を抜いて透明にしたものです。
クリスタリーノは公式の区分ではありません。規格の5区分には含まれず、ラベルには元の区分(アネホなど)が併記されます。熟成の香りと、ブランコのような見た目を両立させた、造り手の工夫から生まれたスタイルです。
ラベルに「SUAVE」(スペイン語で「なめらか」)と書かれたものを見かけることがあります。公式な分類ではなく、造り手が飲み口のやわらかさを示すために使う表記です。三回蒸留やろ過など、口当たりを整える工程を経たものに付けられることが多いようです。
100%アガベの表示は別の軸
熟成区分とは別に、原料をどこまでアガベでまかなうかによる区分があります。ブランコにもレポサドにもアネホにも、それぞれ100%アガベのものとそうでないものがあり、熟成の長さと原料の区分は連動しません。ラベルでの見分け方は、原料による分類で説明しています。
色と樽
※左から、ブランコ、レポサド、アネホ。同じ造り手の同じ原酒なら、樽で過ごした時間が長いほど色は濃くなります。
ただし、銘柄をまたいで「色が濃いほど長く寝かせている」とは限りません。色を決めるのは期間だけではないからです。何が色を決めるのかを、順に見ていきます。
色と香りはどこから来るのか
樽で寝かせているあいだ、オークの木に含まれる成分がお酒に溶け出します。これが色と、樽熟成に特有の味わいのもとです。熟成が長いほど、タンニンと呼ばれる渋みの成分が増えていくため、分析ではその量を熟成期間の目安として使うこともあります。
アネホの説明で「バニラやカラメルを思わせる香り」と書きましたが、その香りの中心にあるのがバニリンという成分で、天然のバニラの香りと同じものです。バニリンはオークの抽出物に多く含まれ、樽の内側を火で焼く(トーストする)と、量が大きく増えます。木の成分であるリグニンが熱で分解されてできるためで、強く焼いた樽では燻したような香りの成分も生まれます。
※どの成分がどの程度出るかは、木の種類、焼き方、樽を使った回数で変わります。ここに書いたのはワインや蒸留酒に共通する樽の一般的な性質です。
樽の大きさと使い回し
| 樽の大きさ | 小さい樽ほど、お酒と木が触れる面積の割合が大きく、色も香りも早く移ります |
|---|---|
| 樽の使用回数 | 新樽は色が出やすく、バーボンなどに使われたあとの樽はおだやかです |
| 内側の焦がし | 樽の内側を焼く度合いで、色の出方と香りが変わります |
| 着色 | テキーラのホーベンは、規格で認められた着色で金色にできます |
同じ期間でも、小さい樽のほうが色も香りも早く移ります。小さい樽で短く寝かせたレポサドが、大樽のアネホより濃いこともあります。
テキーラの樽でいちばん多いのは、バーボンに使われたあとのアメリカンオークの樽です。バーボンは規則で新しい焦がし樽しか使えないため、使い終わった樽が安定して市場に出てきます。これをテキーラの造り手が買って使うので、バニラや焼き菓子のような香りが共通して現れます。使い込んだ樽を削り直して再び焼く「再生樽」も使われます。
アメリカンオークが基本ですが、フレンチオークやハンガリーオーク、日本のオーク(ミズナラ)、アカシアや桜といった木を試す造り手もいます。ワインやコニャックの樽で仕上げる製品もあり、同じ「アネホ」でも樽の来歴で香りはかなり違います。
寝かせる場所と目減り
メスカルの規格には、レポサドとアネホを「光・温度・湿度の変化が最小の場所」で寝かせる、という条件があります。シナイが地下の貯蔵庫を使うのもこのためで、地下は一年を通して温度が安定し、熟成がおだやかに進みます。
樽は木でできているので、寝かせているあいだに中身が少しずつ蒸発して減っていきます。暑く乾いた場所ほど減り方は大きく、長く寝かせるほど残る量は少なくなります。アネホやエクストラ・アネホが高いのは、保管の年数だけでなく、この目減りも価格に乗っているためです。
色では判断できない
ここまでをまとめると、色は「足せる」し「抜ける」ものです。
| 色を足す | テキーラのホーベンは、規格で認められた着色料や樽の抽出物で金色にできます。熟成させていなくても色は付きます |
|---|---|
| 色を抜く | クリスタリーノは、アネホをろ過して色を抜いたものです。無色でも中身は熟成酒です |
熟成させていないテキーラに樽の抽出物やカラメル色素を足し、熟成酒に見せかける不正が検出された例もあります。分析で見分けられるのは、本物の熟成では木の成分が時間とともに増えるからです。
区分は色ではなく、ラベルの区分語で判断します。
区分ごとの向き
熟成の長さは品質の順位ではありません。どの区分が合うかは、どう飲みたいかで決まります。
選び方の目安
※左から、ブランコを食事とともに、レポサドをロックで、アネホをストレートで楽しむ例。AI生成のイメージです。
| ブランコ、メスカルのホーベン | アガベの風味そのもの。カクテルのベースに、食事と合わせて、産地や造り手の違いを比べるときに |
|---|---|
| レポサド | 角がとれて飲みやすく、初めてストレートで飲むなら。ロックにも |
| アネホ、エクストラ・アネホ | 樽の香りを楽しむ。ストレートで、食後に。ウイスキーやブランデーを飲む方に |
飲み方の具体的な話は、テキーラの楽しみ方とメスカルの楽しみ方で紹介しています。
料理と合わせるなら
三崎港のMEZCAL LOVEで実際に出している組み合わせを、区分ごとに並べます。
| ブランコ、メスカルのホーベン | マグロ3種タコス(づけ、尾の身、ほほ肉)やシーフードのタコス。アガベの香りが魚の脂と塩気に合います。チップス&サルサ、ワカモレのような前菜にも |
|---|---|
| レポサド、アネホ | ナッツチョコ。樽の甘い香りとチョコレートが重なります。鶏肉のプエブラ風モレのような、カカオと唐辛子の複雑なソースにも |
| メスカル全般 | オレンジとタヒン(唐辛子とライムの塩)。メキシコでメスカルの定番のおともです |
※組み合わせは好みの幅が大きいものです。ここに挙げたのは、お店で定番として出しているものです。
実際に飲み比べるなら、神奈川県・三崎港のMEZCAL LOVEがあります。さまざまな産地や品種をそろえたメスカル専門のダイニング&バーです。
価格との関係
熟成が長いほど、保管の期間と熟成中の目減りが価格に乗ります。ただし、テキーラの価格差でいちばん大きいのは原料の区分(100%アガベかどうか)であって、熟成ではありません。棚に並ぶ一本の値段が何で決まるかは、テキーラの価格を左右するものにまとめています。
それぞれのお酒の全体像は、こちらをご覧ください。










